宝瓶宮占星学 ―宝瓶宮時代の新しい西洋占星術―
HOME > 基礎から学ぶホロスコープ > 特別講座1:ハウスシステムの選択
西洋占星術のハウスシステムは100種類前後もあって、数は多いのに、どれが正しいのか決定打に欠き、いまだに定説がないのが実状です。
ハウス(室)の解釈自体にも問題があるのですが、ここでは理論的に正しく、実際に使ってみても最も適切なハウスシステムの使い方をご紹介いたします。
▲レギオモンタヌス(Regiomontanus)
本名:ヨハン・ミューラー・フォン・ケーニヒベルク 1436-1476=ドイツの天文学者
●第1稿 : 2011年 5月18日アップ
西洋占星術には3つの弱点があります。
何度もお伝えしているように、まずは「吉座相」や「凶座相」といった「吉凶解釈」が1つめです。
2つめは、誇大解釈に流れている「ハウス(室)解釈」です。
どのハウスシステムを用いるのが正しいのか決定できなければ、本来はハウス(室)解釈も成り立たないと思うのですが、慣習的に過去の解釈を踏襲して「おかしいなぁ…?」と思いつつも使っているようです。
『西洋占星術と宝瓶宮占星学によるホロスコープ・リーディング入門講座』を読まれた方であれば、本来の「ハウス(室)解釈」は何なのか、古典占星術からある伝統的なハウス(室)の3区分、「アンギュラー・ハウス」「サクシデント・ハウス」「カデント・ハウス」などから類推的にでもご理解できると思います。
さらには、西洋占星術ではあまり使われないのですが、4つの「クワドラント(象階)」(西洋占星術では「象限」)を、宝瓶宮時代の象意から現代的に解釈してお伝えしましたので、ホロスコープの原則からもハウスの流れを解釈できるはずです。
3つめの弱点は、「基礎理論」をなくしてしまったことです。
かつてあったギリシャ時代の世界観に基づく「基礎理論」は古すぎて使えませんが、例えば、どのハウスシステムを用いるのが正しいのか確信を持てなかったり、西洋占星術師や研究家によって考えが異なるのは、ホロスコープ解釈の根本となる宇宙観に基づく「基礎理論」がないためです。
One-Point ◆ 西洋占星術の「ハウスシステム」は主なもので10種類以上、全部で100種類前後もあるといわれています。内容の重複は避けますので、ご興味があれば「西洋占星術のハウス解釈」などのページをご一読ください。
●ハウスシステムは、大きく分けて2種類あります。
「ソーラーサイン・ハウスシステム」のタイプと、「ASCハウスシステム」のタイプです。
前者は太陽を第1ハウス(室)におく定番のハウスシステムで、最もよくその人の個性や性格を象わします。
ここで取り上げたのは、後者の「ASCハウスシステム」で、分割方式によってハウス(室)の境界線の位置が異なってきます。
《代表的なハウスシステム》
プラシーダス/コッホ/メリディアン/キャンパナス/レジオモンタナス/ポーフィリー/モリナス/トポセントリック/アルカビティウス/ホール(Whole)/イコール(ASC基準、MC基準)など。
世界の国々では、いろいろなハウスシステムが使われています。
日本の主流は、やはり「プラシーダス・ハウスシステム」でしょう。
「現代占星術の父」といわれたアラン・レオが「プラシーダス・ハウスシステム」を用いたためで、日本の西洋占星術もアラン・レオの秘教占星術の影響を大きく受けていることを意味します。
基礎から学ぶホロスコープ「第4回:古典占星術と現代占星術」でご紹介したとおり、海王星発見直後のオカルトブームに乗って始まった現代の西洋占星術は、古典占星術を単純化することによって一般に普及し、世界的に復興を果たしました。
その反面、「当たる・当たらない」のオカルトチックな占いに堕してしまったのも事実です。
それはともかく、「プラシーダス・ハウスシステム」の改良型である「コッホ・ハウスシステム」も最近では使われています。
一方で、アラン・レオのオカルトチックな秘教占星術に反発する人々は、太陽を第1ハウス(室)におく「ソーラーサイン・ハウスシステム」を用いたり、本格的な古典占星術の流れをくむ人々は、かつて主流をなした「キャンパナス・ハウスシステム」や「レジオモンタナス・ハウスシステム」なども根強い人気があって使われています。
One-Point ◆ 上記の4種類の「ASCハウスシステム」は、4つの基本点(Angle アングル)が同じです。基本点というのは、第1、第4、第7、第10ハウス(室)の始点で、ASC(Ascendant アセンダント=上昇点)、IC(Imum Coeli イムン・コエリ=天底:北中点)、DES(Descendant ディセンダント=下降点)、MC(Medium Coeli メディウム・コエリ=天頂:南中点)の4つです。
●図は、北緯35度の地域の場合。
「プラシーダス」も、その改良型である「コッホ」も、ASC(上昇点)とMC(南中点)を基準に各ハウス(室)を「時間分割」したものです。
詳しいご説明は省きますが、宇宙・太陽系の星に基づくホロスコープは、宇宙哲理に基づいて、「空間分割」のハウス(室)システムでなければなりません。
一方、サイン(宮)は、春分点を起点にした「時間分割」で正解です。
余談ですが、「12サイン(宮)は黄道を空間的に30度ずつ分割したもの」という表現は、正確ではなく概念的な言葉です。
実際、黄道が天頂を通過する時(該当地域)以外は、黄道は地球表面から見たときに、空間(可視)的には伸縮して移動するために、「空間分割」は不可能です。
それゆえホロスコープでは、ときに挟在サイン(きょうざい:ハウスの境界線に挟まれたサイン)が生じることがあるのですが、これは「時間分割」であるサイン(宮)をハウス(室)によって「空間分割」するために生じるものです。
閑話休題、では何を基準にして12ハウス(室)を「空間分割」するかということが重要になります。
当然、黄道を空間的に等分するのが正解ですが、残念ながら、今日の西洋占星術の代表的なハウスシステムの中には見当たりません。
これでは西洋占星術自身が、どの「ハウスシステムを使うのが正しいのか」決定できないのも当然です。
しかし、正しいハウスシステムに近いものなら、2つあります。
「キャンパナス・ハウスシステム」と「レジオモンタナス・ハウスシステム」です。
最も近いハウスシステムが1つではなく、なぜ2つあるのかということは、読み進めていくうちに分かるでしょう。
One-Point ◆ 「キャンパナス」と「レジオモンタナス」は、分割方式が似ているために、兄弟のようなハウスシステムです。もちろん、基本点は共通なので、残り、第2、第3、第5、第6、第8、第9、第11、第12と、8つのハウス(室)の境界線が変わってきます。
●「キャンパナス」と「レジオモンタナス」の最も大きな違いは、境界線ではなくカスプ(Cusp=尖点)のとり方です。
レジオモンタナス・ハウスシステムは、「プラシーダス」などのように、境界線にカスプ(尖点)を置きます。
ご存じのように、カプス=境界線になります。
一方、キャンパナス・ハウスシステムは、境界線と境界線の中間にカスプ(尖点)を置きます。
これを「ミッド・カスプ」といいます。
ところがキャンパナスで、誤まって境界線をカスプ(尖点)として使っている方もいるようです。それはレジオモンタナスに(近く)なってしまいます。
もっとも、夏場に限ればそれが正しいのですが…。(笑)
「キャンパナス」と「レジオモンタナス」の分割方式は下図のとおりです。
「キャンパナス(左図)」は、出生地など「占星地」の真上、すなわち天頂と、その占星地からみて東を通る「プライム・バーティカル(Prime vertical=卯酉線:ぼうゆうせん)を基準にして、天底までの半円を30度ずつ6分割します。
それを、南北の水平軸を中心に、横からスイカを放射状に等分カットするようにして6つの分割点を通るラインを黄道帯に当てはめ、ホロスコープの左半球6つのハウス(室)の境界線とします。
一方、「レジオモンタナス(右図)」は、地球の赤道を宇宙に投影した天の赤道(Celestial equator)を基準にして、同様に30度ずつ等分して、キャンパナスと同じ方式で左半球6つハウス(室)の境界線としていきます。
この分割方式を理解できると「キャンパナス」と「レジオモンタナス」は、赤道直下、すなわち北緯0度(南緯0度)では、12ハウス(室)がまったく同じ境界線になることが分かります。天の赤道がそのまま天頂を通るためです。
逆に、緯度が大きく(高く)なる地域ほど、両者のハウス(室)の差異は大きくなっていきます。
One-Point ◆ これらのハウスシステムは、第10〜第12と第1〜第3ハウス(室)、6つの境界線を抽出し、それらを正反対の第4〜第9ハウス(室)にあてます。そのため、DES(下降点)は西の地平線とはかぎりません。夏至(蟹宮0度)ほどホロスコープ上の実際の西の地平線の位置は、第6ハウス(室)にずれ込み、冬至(山羊宮0度)ほど第7ハウス(室)を上昇します。
●日本は案外と大きな国です。
日本標準時、兵庫県明石市の北、西脇市に「日本へそ公園」があります。
ここがちょうど、北緯35度、東経135度の位置です。
ちなみに最北端の北海道宗谷岬は、北緯35度31分。
最南端の東京都沖ノ鳥島は、北緯20度25分。
有人島では沖縄県の波照間島が北緯24度2分です。
「キャンパナス・ハウスシステム」と「レジオモンタナス・ハウスシステム」をどのように使えば、より正しいハウスシステムに近くなるのか書いておきます。
日本を通る北緯35度の場合です。
夏至(蟹宮0度=6月21日前後)を中心とする3か月間は、「キャンパナス・ハウスシステム」が、最も正しいハウスシステムになります。
100%正しくはないけれども「最も近い」という意味です。
冬至(山羊宮0度=12月22日前後)や、春分(牡羊宮0度=3月21日前後)や、秋分(天秤宮0度=9月23日前後)を含む残り9か月間は、「レジオモンタナス・ハウスシステム」が、最も正しいハウスシステムになります。
これも100%正しくはないけれども「最も近い」という意味です。
具体的な日付けを書くと、おおよそ次のようになります。
1月1日〜5月5日頃 → レジオモンタナス・ハウスシステム
5月6日頃〜8月8日頃 → キャンパナス・ハウスシステム(境界線のみ)
8月9日頃〜12月31日 → レジオモンタナス・ハウスシステム
※追記 2012.12.19:毎日お昼12時の場合の日付けです。実際は日々時間帯によって異なります。それでもレジオモンタナス・ハウスシステムが最も近いのは変わりません。
上は、いずれも北緯35度の場合で、地域や国によって幾分なりとも異なってきます。
実際に「キャンパナス」と「レジオモンタナス」でハウス(室)をだしてみれば分かると思いますが、ASC(上昇点)とMC(南中点)など基本点(Angle)は変わらなくても、他のハウス(室)では、季節(日時)によって、最大で6〜7度の差が生じることがあります。
これは、太陽と星が通る黄道の位置が、夏至や冬至では異なるためです。
春分や秋分は、「レジオモンタナス」がほぼ正しいことをご留意ください。
One-Point ◆ 同じ日本でも、沖縄県(那覇市)など赤道により近づくほど、両者のハウス(室)の境界線は最大でも約4度と小さくなります。逆に北海道(札幌市)では、最大で約11度も異なってしまいます。ただし、重要な星やサイン(宮)が両者の境界線の差異の中にあって、それが特に重要な場合を除いては、両ハウスシステムを厳密に検討して正しいハウス(室)の境界線を出しても、あまり意味はありません。
※2012.5.30 付記 : 念のために書き添えておきます。上述のキャンパナス・ハウスシステムは、カスプ(尖点)ではなく、「ハウスの境界線」が最も正しいものに近いという意味で取り上げています。何のことか分からない方は、左欄外の「カスプ(尖点)と境界線の違い」をご一読ください。
第12回:ホロスコープの活用と実際 ← BACK
NEXT → 特別講座2:プラトン年の理解
※当ページの内容は著作権法により保護されております。無断使用はご容赦お願い申し上げます。
Copyright(C) 2005-2011 Aquariun Astrology - Seiji Mitoma All rights reserved.